神戸市立赤塚山高等学校

インターネットを活用した英語教育実践

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教諭 桝井 伸司

ALT David Kellum

『21世紀をまさに迎えようとしている現在、教育においても世界の情報化の動きに柔軟かつ迅速に対応することが望まれている。このような状況の中で高校生 が世界の中で自らを見つめ、自発的に情報を収集、判断し、消化したのちに自己の意見を発信していく態度を身につけていくことが大切である。』これらの態度 を養うにはインターネットを利用するのが最適と考え、授業の中に取り込むことを考え、研究してきた先生がいます。

 教師用のWindowsパソコン1台にインターネットを接続し、生徒用としては数年前のDos対応(フロッピー起動)マシン 24台という環境の中でどのようなことができるのか、桝井先生の授業での実践例を紹介してもらいました。

はじめに

 インターネットがまだ現在のように一般化していなかった1994年秋、神戸市は全国に先駆けてホームページを公開し、ネットワーク化の一環として教育分 野にも実験的にインターネット導入を試みました。その際に本校は神戸市内の他の高校と共にシアトル市との教育プログラム(電子メールを利用した交換プロ ジェクト)に参加し、同時にホームページを開設しました。開設当初より、海外諸国に日本の文化やありのままの高校生活を伝える、ということをコンセプトに ホームページを運営してきました。カナダとの電子メール交換に始まり、ホームページでは、95年の震災後の状況についての生徒によるレポート、フランスの 核実験に対する意見交換、環境問題に対する意見交換などなど。内容は多岐に渡りますが、基本は生徒自身が「伝えたい内容」を持ち、それを英語という道具を 使って表現させていくという点に置きました。昨年10月に全米27紙に本校のホームページが紹介されたり(http://www.4kids.org /提供)、12月にはAdobe Press社のKids Do the Webという本にホームページによって情報発信している学校の1つとして大きく取り上げられるなど、その反響に驚かされました。急速に普及してきていると はいえ、インターネットはまだまだ新しいメディアであり、授業の中に効果的に取り込み、あくまでも道具としてネットワークを利用していくということを目標 に取り組んでいます。  現在、神戸市では小学校から高等学校までのすべての学校にインターネットの端末を設置し、職員室からいつでもインターネットにアクセスすることができる ようになっています。ホームページについては、生徒の個人情報公開に関する基準を含めてページ開設のガイドラインについて教育委員会を中心に検討中で、そ のガイドラインを受けて各校が徐々にホームページを公開していく手順になっています。実験段階から実用段階へと、インターネット利用は着実に教育分野にも 浸透してくるものと思われます。本校ホームページの情況ですが、ガイドラインが現在(97年6月)まだ示されていないので、今年度に入ってから更新停止中 で、またURLもYahoo等の各検索サイトに登録されているものと違う場合があります。http://www.kobe-school.net/akatsuka/に アクセスすれば仮のURLに転送されるよう設定していますが、これはあくまでも仮の処置ですのでご了承ください。また、震災の影響もあり、来年度より本校 は神戸商業高校とともに新校舎に移り、新構想高校との3校併置となります。3年後には新構想高校に統合移行されていく予定で、ホームページについても、 ネットワーク利用についても情況は大きく変化することになることが予想されます。

 以下は今年度3年生の選択ライティングの授業でインターネットの利用を考えた際の年間計画、及び現在の進行状況です。今後同じような情況でネットワークを利用されようとされる先生方の御参考となれば幸いです。

ライティングでの利用の実際

1)設備

教師用 パソコン(Pentium 150Mhz、メモリ32M、ハードディスク2GB、モデム)1台、Zipドライブ、ビデオキャプチャーカード、TV会議システム(予定)、液晶プロジェクター(ノートを取れる程度に照明をつけていても見えるくらいの強力なもの) 生徒用 パソコン(テキスト入力の出来るもの、フロッピーで起動する数年前に導入した機種)  教師用と生徒用のシステムに大きな落差がありますが、どこの学校でもそうでしょうが、予算の壁というものがあります。しかし、この生徒用のシステムの意外な利点としては  �少々乱暴な扱いをしても、まずシステムは壊れない。 �エディターが自動起動するように設定してあるので生徒はフロッピーを入れて電源を入れるだけでよいので簡単。 ということがあげられます。

2)年間計画

目標・ライティングにおける基礎的な文法事項、表現法を身につけること。

・コンピュータ操作に慣れること、E-mailの送受信ができるようになること。

・インターネットの概要(インターネットで出来ること)を理解し、ネットワーク上に自分の意見を発表できるようになること、またネット上で意見交換をすることにより、自分の考えを深めていくこと。

 1学期は�Basic Skillとして1)コンピュータ操作に慣れさせる、2)ライティングの基礎としてのブレーンストーミングに慣れさせ、�Using Mailでメールを使い、英文を書く事によるコミュニケーションに慣れさせ、�Topicsとして1)特定のトピックについて自分の考えをまとめさせ、 2)Web上のBBS(掲示板)に自分の意見を発表する、という3つの面から授業を進めていくことにしました。

 まず�Basic Skill の1)についてですが、あらかじめOS、エディターを入れておいたフロッピーディスクを生徒に配布し、パソコンの電源さえ入れればエディターが使える状態 にしておきます。エディターとしてはDOSで動くフリーソフト、JEDを使っています。ファンクションキーにメニューが割り当てられているので初心者にも 使いやすいエディターです。新規ファイルの作成、保存、読み込み、編集の方法などを指導しました。次に2)のブレーンストーミングですが、あるテーマから 連想する単語、事項などを図に記入していき、そのテーマに関して自分が連想することをその図に書き加えていくことによってテーマに関する認識を深めていき ます。ある程度その作業が終わった後は、その図を参考にして短文を書き、徐々にそれをパラグラフへとReviseしていきます。最初のうちはなかなかうま く連想が結びつかない生徒が多いのですが、徐々に慣れてくるようです。

 �Using Mail 1)では海外とのメール交換を始める前に、実際のメール交換の練習として、まず自分のフロッピーに自己紹介、教師(ALTのDavid先生と 私)への質問、メッセージなどを書き込み、授業後にそれを教師が添削したり、返事を書いたりする、という形をとりました。それが慣れてきた頃に 2)でメールアドレスを取得させました。設備のところでも触れましたが、インターネットにアクセスできるパソコンが1台しかないので、www上から電子 メールを読み書きすることができるサービスを利用しました。このサービスというのは、wwwにさえアクセスできればその画面上からメールの授受ができ、し かもフリー(自動的に広告をロードするようになっているため)で登録できるものです。現在このようなサービスを行っているサイトとしては、http://www.netaddress.com/http://www.rocketmail.comhttp://www.hotmail.comなどがあります。好きな名前で、例えば、smasui@usa.netな どのメールアドレスを取得でき、物理的には世界中どこからでも、自分のコンピュータを持っていくこと無しにメールの授受ができ、その会社が倒産でもしない 限りそのアドレスを恒久的に使うことができる、という利点があります。このアドレスを生徒に取得させ、さらに私個人で持っているサイトのメール転送を利用 してメーリングリストを作り、そのアドレス宛てのメールは生徒全員が読むことができるようにしています。最近、日本語を勉強したいというアメリカの高校生 から学校宛てにメールをが届きましたが、この生徒にそのアドレスを紹介し、メール交換を始めた生徒も出てきました。

 �Topics では Basic Skillで練習している「ブレーンストーミング→パラグラフ作成」という方法を使ってDream Home、School Lifeなどのトピックについて文章を書いていきます。完成した文章はwww上のBBS for Studentsに書き込みます。このBBSというのは今回のライティング用に作った掲示版のようなもので、wwwのブラウザ上から文章を書き込めば、そ れがその場でインターネット上に出版されるというものです。出版された文章の読者がその文章に対して感想を書くこともでき、その感想もその場でインター ネット上に出版されます。また、まったく違ったトピックを始めることも可能なので、今まで生徒の作品等を発表する場のなかった先生方にもどんどん利用して いただければ、と考えています。アドレスはhttp://www.masui.com/bbs/bbs.htmlです。具体的には、生徒は書き込んだ自分のフロッピーを教師用パソコンに入れ、そこから自分のファイルを呼び出して、wwwブラウザー上で貼り付ける作業を行います。

 その他の活動としてはPowowというチャットソフトを使ってカナダ人の生徒とやり取りをしたことがあげられます。相手側は夜の10時くらいでしたが、 頼み込んで30分ほど付き合ってもらいました。このソフトでは相手を国名や年齢、趣味や性別によって選択することができ、回線情況によっては音声による会 話もできます。タイピングはDavid先生が担当し、生徒たちは液晶プロジェクターによって拡大した画面を見ながら相手に質問をしたり、相手の質問に答え たりしていきます。画面の向こうに実際に存在する同世代の若者との文字を通じた会話に、生徒達は少々興奮気味ながら、熱心に画面に見入ったり、質問を考え たりしていました。

 ここまでが6月現在までの経過です。2学期・3学期にはおそらく正式な学校ホームページが再開しているでしょうから、トピックをもとにしたライティング を中心にし、生徒それぞれに文化的テーマに基づいたホームページ作成をさせる予定です。ねらいとしては生徒自身の目から見た日本の文化、といったようなも のができれば、と思っています。他の教科と共同して、ということも視野に入れていきたいと考えています。

授業の流れ 1学期
1. Basic Skill 2. Using Mail 3. Topics
1)コンピューターに慣れる。
2)短文からパラグラフへ。
ブレーンストーミングを使って
自分の意見を整理し、
膨らませていく。
1)フロッピーに教師への
メッセージなどを入力し、
それに対して教師が答える。
2)フリーのwwwベースのメールサービス
を使って生徒1人1人にメール
アドレスを与える。
メールの送受信に慣れる。
1)自分の考える夢の家、
Dream Homeについて書いてみる。、
School Life 学校生活(クラブ活動、友人)
について書いてみる。
Daily Life 日常生活について書いてみる。
2)書いたものをBBSに書き込み、
海外の生徒にも読んでもらう。
その他

 インターネットを授業に取り入れていくには、英語の授業でありながら、インターネットやコンピュータの仕組みについて授業内で扱う時間が必要です。今 後、各家庭でネットワークが日常的に使われるようになればその時間も省略できるかとは思いますが、現状ではまだまだのようです。電子メールについて、ネチ ケットについて、ネット検索法、その他インターネット全般にわたって授業を進めていく際、役に立つかもしれないテキストを紹介しておきます。それ は"Internet Driver's License"というアメリカのClassroom Connect 社から出版されているもので、インターネットの基礎を教えるための教師用マニュアル、30人分のテキスト、ビデオ、CD-ROM、インターネットの運転免 許証などが入ったセットで、これを使うと一通りのことを学べるというものです。Classroom Connect社のホームページ(http://www.classroom.net)からProductsを選択すると製品紹介および発注ができます。日本でもそろそろこういったものの需要が出てくるのではないでしょうか? ネットワーク利用を正式にカリキュラムの中に取り入れていく時代がすぐそこに来ているような気がしています。

桝井 伸司 


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July 4,1997