ICP'98 Housing Room

1、クラスのねらいと特色

 国際交流を円滑に進めていくには、予備知識として、交流相手国と自分の国との生活習慣の違いを知っておかなくてはならない。文化的な背景や地理的なもの等様々な違いはあるが、おうおうにして、生活の基本となるのは「衣・食・住」である。このHousing Projectではそのうちの「住」に焦点を絞って、プロジェクトを実施した。

2、教師と生徒のプロフィ−ル

 当初、このHousingはEE(英語表現)の授業での1つのトピックとして取りあげたものである。本校(葺合高等学校)の対象生徒は英語科の2年生で、EEの授業の中で実施した。英語科1クラス40名のうち、13名の生徒がこの授業を選択しており、アメリカ、韓国などからの帰国子女も含まれている。また、オ−ストラリア・マクレガ−高校からの留学生2名もこの授業を選択しており、語学学習に積極的な生徒が多いことが特徴となっている。

 アメリカのケネウィック高校も本校と同様に、18名の生徒が参加し、アメリカの住宅事情をホ−ムペ−ジに作成している。

3、交流の実際

図1Housing in Japan (Kobe)

http://www.kobe-school.net/housing/housingjapan.html

 EEの授業では日本紹介トピックの1つとしてこのHousingを取り上げた。まず生徒を2〜3名のグル−プに分け、各グル−プごとに図1にある項目についてリサ−チを行い、レポ−トにまとめた。リサ−チにあたっては新聞広告や図書館、住宅展示場などで資料を収集した。また、自宅の写真を資料として持参した生徒もいた。収集した資料をもとに、授業中に編集作業を行ったが、教室はさながら雑誌の編集室とも言うべき様相を呈した。

図2 Statistics on Renting in Kobe

 リサ−チ→プレゼンテ−ションという授業の進めかたは、日常的に行われているようであるが、インタ−ネットを利用した今後の授業ではこの方法を取り入れたものが主流になってくると思われる。

図3−1 Japanese House Walkthrough

図3−2 Japanese House Walkthrough (Bath Room)

 図2は、Statistics on Renting in Kobeで、神戸市内で部屋を借りる際の具体的な間取り図と家賃についてのレポ−トをホ−ムペ−ジの形式にしたものである。間取りを掲載することで、海外の人は具体的な部屋のイメ−ジができ、自国の状況との比較も容易となっている。図3−1はJapanese House Walkthroughというコ−ナ−で、日本の典型的な家の間取りを具体的に説明している。図3−2はこの中の1つで、バスル−ムを画像を交えて説明したものである。Housing in Japanではその他にも、現在神戸市内で部屋を借りる際にかかる費用などを、具体的な数字を交えて事例をあげて説明している。

 Housing in Japan(Kobe)完成後、これをもとに海外の学校も参加できる掲示板、Housing BBSを設置した。このBBSでは、画像、テキストとともに参加者がWebにアクセスすることによってアップロ−ドできるようになっている。(図4)

図4Housing on the BBS

4、教師の果たす役割

 あるトピックについて、自国の状況をリサ−チし、それをレポ−ト(ホ−ムペ−ジ)の形式にまとめるという形態の授業では、教師は、生徒のサポ−ト以外に様々な役割が要求される。特にここでは、雑誌や新聞などの編集長の役割が大きい。教師はまず、生徒が収集してきた様々な情報を取捨選択し、その中から有効な情報を選び出す。そしてそれを画像を交えてネットワ−クを通して世界にプレゼンテ−ションさせる。

 また一方では、海外の生徒についても、同様の作業を行わせ、完成したプロダクトについて双方の生徒に比較対照させる。それぞれの作業の中から生まれた相違点について質問、意見交換を行わせることで、生徒は、異文化に対する理解を深めることができる。さらに、他の国の生徒との交流をも深めることができる。

 教師は、生徒の疑問に答え作業を手助けすることのほかに、生徒が自主的に活動意欲を起こしてゆく過程全般に渡って指導する役割を担っている。

5、評価

 今回、葺合高校、アメリカのケネウィク高校のクラスがWebを利用してお互いにHousing についてのペ−ジを完成させた。(図5、6)資料収集から編集という一連の作業は、非常に労力を要するものではあったが、それだけに教師・生徒共に得る充実感や達成感も大きかった。また、これを契機として、生徒一人一人が「住環境」の現在、そして今後の在り方までを、系統立てて考察できたことは、当初の期待以上の成果を得たと言える。

世界の住宅情報についての高校生による情報の調査・発信は21世紀の住環境を考えていくうえでも、非常に重要なことであると考えられる。今回は学期の違い等の関係で、双方のやり取りが少なかったことが残念であるが、今後、このペ−ジを充実させていくことにより、世界中の住宅情報のデ−タ−ベ−スができ、授業の様々な場面で利用されて行くことが期待される。

図5 Housing in Kennewick

http://www.kehs.ksd.org/specproj/housing/index.htm

図6 Housing in Kennewick (Bathroom)