インターネットの授業での活用分類とその長所短所

インターネットの教育利用について各地で様々な実践報告がされています。現時点で考えら
れる利用法、特に日頃の授業での活用法についてその長所、短所、注意点などをまとめてみました。

1)交流型 

< 電子メールを利用した国際交流 > 
形態:クラスークラス、個人―個人 

電子メールはネットワークの利用での基本とも言えるものです。ネットワーク利用は電子メール
に始まり、電子メールに終わる、と言ってもよいでしょう。

長所 
* 1つのメールアドレスで始めることが可能、 
* 設備等がなくてもできる。(1台のパソコン・モデム・電話回線) 
* 適した相手校を見つければ内容的にも深い情報交換ができる。(姉妹校があれば最適) 

短所 
* 海外校を相手にした場合、学期制の違いのために継続した交流が困難なことがある。 
例:アメリカの学校では5月末から休暇に入るので日本の学期が始まり、交流に都合のよいと思わ
れる6月が使えない。実質的には 9−12月が共同で授業に利用できる期間である。 

・学年始期の違い
2月:オーストラリア、ニュージーランド、ブラジルなど 22ヶ国
3月:韓国、チリなど12カ国
4月:日本、スリランカ、パナマなど5カ国
8月:西ドイツ、スウェーデン、ベルギーなど10ヶ国
9月:アメリカ、イギリス、カナダ、中国など100ヶ国 
〇「海外子女教育マニュアル」海外子女教育振興財団編より

* しっかりした目標設定がないと自己紹介だけで終わってしまう。 

ポイント
* 交流目的の明確化 
* 個人メールとクラスメールの使い分け 
電子メールを主体とした場合、個人同士が送りあうメールと、クラス単位で取り扱う内容のものを
区別することが大切です。特に生徒自身がメールアドレスを持っていない場合は多くの生徒が個人
メールを希望した場合、処理が煩雑になることが予想されます。

* 教師同士の事前の打ち合わせ 
上記のメールの使い分けにも関連しますが、交流校の教師同士の目的意識によってもその後の展開
に違いが出てきます。例えばこちらはテーマごとの意見交流を目的としているのに相手校が個人の
ペンパルを想定した交流をイメージしている場合、どちらにとっても得るものは多くないかもしれ
ません。
* 休業中のケア 
継続した交流を望む場合はお互いが共通して活動できる時期が始まってから交流テーマを考えてい
たのでは貴重な時間が失われます。休業中に十分な準備をしておくことが肝要です。

2)資料検索型
< wwwの検索ツールを活用し、レポート作成などを行う > 
形態:グループ学習、個人学習――検索のテーマを与える 

語学の授業に限らず、様々な授業での利用が考えられるのがこの資料検索型です。

長所 
* 生徒が主体的にネットから情報を取り出すことができる。 
* 与えられたテーマを生徒自身の発想で膨らますことができる。 
短所 
* 教室内にインターネット接続された端末が数台必要 
(1人1台が理想だがグループ学習の場合各グループに1台でも) 

ポイント
* 検索ツールと電子メールの組み合わせにより、より正確で詳細な情報を得る

ネット上の情報が常に真実であるとは限りません。情報を多角的に分析する姿勢がここでは重
要になってきます。場合によっては情報発信者に直接連絡をとって、より詳しい情報を求める
ことも必要となるでしょう。

3)作品発表型 

< 制作、創作したものを世界に向けて発表する > 
形態:授業で制作した作品や作文などをWebに公開する。 
ホームページを持っていることが必要 

長所 
* 本来なら、授業で作成→教師の評価 で終わっていたものを世界の人に見てもらうことで1つ
の動機づけとする。 
短所 
* 一方通行になり易いので注意する。 

ポイント
* Web を見ている人に感想を求めたり、同様の作品を掲載している学校とリンクを張り合った
りすることにより作品発表に双方向性の要素を取り入れる。

4)リアルタイム交信型

< Cu-SeeMe(TV会議)やインターネットフォン、IRC 等を利用し、リアルタイムで情報交換をおこなう > 
形態:教室での参加形態としては1端末の画面を拡大し、代表が交信に参加する。 
長所 
* 臨場感のある情報交換ができる。 
* 外国語の授業などでは聞く、話すといったコミュニケーション能力を試すことができる。 
短所 
* Cu-SeeMe の場合、速い回線がないと画像+音声は難しい。 
* 時差があるため相手との時間調整が困難。 
例:シアトルとチャットをした時はこちらが朝9時、向こうが夕方4時だった。 
* 言語能力がある程度ないと交信の内容を深めることが困難 

ポイント
* 交信のテーマの明確化 
* 相手校との事前の打ち合わせ 

ここでもやはり交信テーマの明確化が重要なポイントとなってきます。時間と空間の制約が
ないことがネットワークの強みですから、時間の制約を受けるこのリアルタイム交信を使う
以上はリアルタイムでないとできない何か、をテーマに交信を行うべきでしょう。目標設定
の為や機材調整の為の事前の打ち合わせに大きな労力を強いられるのが現状のようです。パ
ブリックサーバーに接続し、そこにいる人(たまたまいる人)と会話をするという方法を取
ることもできますが、授業での利用を考えた場合は相手を特定化した方が無難でしょう。

5)イベント型 
< 各地で同一の事を実施し、その後の経過について報告しあったりする > 
形態:プロジェクトによって異なるが、期間を限定して参加校を募集し、参加校はプログラ
ムにしたがってデータを交換する。 

長所 
* プロジェクト運営にあまり気を取られずに参加できるので参加しやすい 
* 全国規模、世界規模で行われるプロジェクトもあるので、参加することにより、広い視野
を身につけることが出来る。 

短所 
* 日頃の授業との絡みをよく考えて参加することが必要。(難易度・進度)単なる「イベン
ト」に終わってしまわないように。 

ポイント
* 参加校同士の交流やホームページとからめていく。 
* 慣れればこちら側からプロジェクトを提案してみる。 

6)ボード型 
< WWWの電子掲示板やニュースグループでトピックごとの意見交換を行う > 
形態:ネット上にトピックについての意見を書き込み、書き込まれた意見についてのディス
カッションをクラス内でも行う。 

長所 
* クラスで調査、討議した事柄をネット上に発表し、またそれについての意見を世界中から
聞くことができるので学習内容をより深めることができる。 
* 時間の制約が少なく、学校の枠を超えてさまざまな人と意見交換をすることができる。 
例:昨年の核実験に対する意見募集には様々な国から多くの意見がよせられ、クラスでそれ
らをもとに討議を深めることが出来た。

短所 
* トピックのネットへの出し方や時期によっても寄せられる意見の質が変わってくるので注
意が必要 
* 自由に誰でも書き込みのできる掲示板の場合、書き込まれる内容や画像などに注意する。
(いたずら防止) 

ポイント
* 討議参加者の確保 ― 場合によっては参加校をつのる。 
* クラスでの作業とネットでの動きの整理 

現状では最も有効に機能すると思われるのがこのボード型です。様々なテーマに基づくこの
ようなボードがネット上に出来てくれば、それらをデータベースとして利用することも可能
になってくると思われます。授業を通じて学習したことや生徒が学校外で調査したこと、地
域情報などを世界の人々と共有し、それらについて意見交換をすることも可能となってきま
す。現状ではこのボードを立ち上げるためには少々UNIXの知識が必要ですが、そのうちもっ
と簡単な方法ができるでしょう。

最後に:皆さんのご意見を...
皆さんはネットワークを使われる際に次の点についてどのようなご意見をお持ちでしょうか?

1. インターネットを授業で使う必然性はあるのか?
「はじめにインターネットありき」では目標を見失いがちになりますし、これからネットワー
ク利用を広めていく場合に「ネットワークでないと解決しない事柄」という意識を持つ必要が
あるのではないかと思います。今後テクノロジーはどんどん進化していくことが考えられます。
そういった技術を提供する側(例えば大学とかプロバイダー)はとりあえず使ってもらうこと
が目標になるでしょうが、実際に授業で利用する側としてはそれぞれ個々の状況に応じて解決
すべき問題に対する解決策としてのネットワーク利用であるべきではないかと考えます。少々
理屈っぽいかもしれませんが、インターネットがある種のブームと一般にとられている現状を
考えると、もう一度原点にかえって考えたいと感じるようになりました。個人的には英語とい
う教科で考えたときに、言語=コミュニケーションの道具、コミュニケーションの為には内容
を伝えるための相手が必要、そのためにはネットワーク環境が最適、という結論に達したので
すが、それ以外の教科の方のお考えもお聞きしたかったわけです。

2.生徒個人にインターネットを自由に使わせる是非あるいは意義は?
これは個人ホームページの問題です。生徒にディスクスペースを開放し、自由な発信を許して
いる大学はたくさんあると思います。中には個人の趣味としか思えないものもありますし(サ
イネットがこのために遅くなっているとしたらまた別の意味で問題です)、研究の為に使って
いるものもあるでしょう。大学側としては「学生は大人」という認識から、もし何か問題がお
こってもその責任は学生に向けられるでしょう。今後、小中高で個人ページを持たせる場合は
どうでしょう?授業や研究にかかわる部分に利用を認める、というのはいけないでしょうか?
ページのコンテンツについては学校がなんらかの責任を持つ必要はないでしょうか?「自由に
発信したい」場合は現在充実してきている商用プロバイダーに個人契約もできるのではないで
しょうか?今回のパネルディスカッションで学校より家庭のほうがすすむ、学校で何を教える
か、という話がありましたが、個人・学校の区別は必要ではないでしょうか?
「個人ページの是非・意義」という質問です。

3.生徒個人にメールアドレスを割り当てる是非は?
アドレス情報管理の問題になると思います。個人が自分のアドレスでメールのやり取りをする
ことは必要だと私は思いますが、そういうのは必要ない、という意見は無いでしょうか?

4. コンピュータリテラシーの時間を学校の中で設けられないか?
小中高がばらばらのコンピュータ教育をしているのが現状だと思います。学校によっても「コ
ンピュータを教えるなら絶対○太郎、1◎3しかない」とか「ベーシックで...」とかばらばら
です。現在文系の高校1年での情報に関する基礎科目について考えていますが、例えば2ー3
年の様々な教科で効果的なコンピュータ利用を可能にさせるためには何をどの程度学ばせる必
要があるでしょうか?これまでの商業系の「情報処理」とは少し違うものにする必要があるで
しょうし、(コンピュータを学ばせるのではなく自己表現の1手段としてのコンピュータ利用
というコンセプト)ブラインドタッチは必要か、いろいろ課題はありますが、そういうことに
関する質問です。現在そのような科目を指導されておられる方がおられれば、また企業の方な
どでなにかご提案があればよろしくお願いします。

現在このようなネットワークに関する話題についてのメーリングリスト、ホームページなどが
続々立ち上がってきています。上記4つの話題についてもしご意見があれば 
http://www.kobe-school.net/wwwboard/wwwboard.html 
までお願いします。

神戸市立赤塚山高等学校  桝井 伸司